「科学的思考には、批判的かつ反抗的な性質が備わっている。あらゆるア・プリオリな概念に、あらゆる不可侵の真理に、科学的思考は反旗を翻す。確実性は知の探求の糧にはならない。知の探求を養うのは確実性の根本的な欠如である。
だから科学は「自分は真理を知っている」という人間を信用しない。そのために科学と宗教はたびたび激しく対立する。科学が「自分は最終的な解を知っている」と主張するからではない。まさしくその反対である。「自分は究極の解を知っている、自分は真理への特権的な接近方法を知っている」と主張する人々にとって、科学的な精神は目障りなものでしかない。知に本質的に備わっている不確かさを受け入れるなら、無知に浸かって生きることを受入れなければならない。
無知は恐怖を招き寄せる。私たちは怖いから自分たちを安心させてくれる話を不安を鎮めてくれる話を語ろうとする。本当かどうかはどうでもいい。この話を信じることを決めてしまえば私たちは安心できる。だがその時、学ぶ意欲は失われる。
〜「すごい物理学講義」by Carlo Rovelli